「瓦屋禅寺本堂屋根葺替(ふきかえ)と檜皮(ひわだ)剥ぎ見学」を開催しました
[2021年11月22日]
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瓦屋禅寺(建部瓦屋寺町)は、箕作山の山腹にある山岳寺院です。寺伝では、聖徳太子が摂津の四天王寺を建立されたとき、山中の土を使って寺の瓦を焼いたことが寺名の由来とされます。
現在の瓦屋禅寺本堂は、江戸時代初期の建立とされ、大規模なヨシ葺き屋根が見事な三間仏堂です。今年は本堂の屋根が80年振りとなる葺き替えの真最中です。今回、ヨシ葺きに携わられている葭留(よしとめ)(代表者竹田勝博さん)にご協力をいただき、その現場を見学しました。
さらに、田中社寺株式会社(代表取締役田中敬二さん)に協力していただき、檜皮剥ぎの技術者である「原皮師(もとかわし)」の技を見学しました。瓦屋禅寺の境内林には、樹齢100年から200年のヒノキが数多くあり、文化財建造物などに使われる檜皮の供給林である文化庁「ふるさと文化財の森(別ウインドウで開く)」に設定されており、この見学が実現しました。
茅葺き(イネ科植物の総称、ヨシを含む)、檜皮葺き、柿(こけら)葺きは、日本の「伝統建築工匠の技」としてユネスコ無形文化遺産に登録されており、世界に誇る技術です。しかし建物や材料の減少から、保護の必要性も強調されています。見学会は、2種類の伝統的な植物性屋根の美と技に触れることができる絶好の機会となりました。
紅葉が始まっていました。
19人の参加者がありました。
ヨシ葺き屋根は通気性、遮音性、断熱性、保温性に優れ、日本の建築で長く用いられてきました。ヨシ葺き屋根の建物は年々少なくなっていますが、瓦屋禅寺本堂は国の登録有形文化財として、伝統的なヨシ葺きを継承されています。
瓦屋禅寺では琵琶湖のヨシが使用されています。琵琶湖のヨシ群落は、景観の美しさだけでなく、生物多様性や水産資源の保護、水質浄化などさまざまな機能を果たしています。ヨシ群落は、冬にヨシ焼きを行うなど、手入れをすることで維持されていきますが、使用されないヨシを保全していくことは困難であり、ヨシの積極的な使い道が模索されています。瓦屋禅寺のヨシ葺き屋根は、地産地消で環境にやさしい日本の伝統文化といえます。
なお、瓦屋禅寺本堂の葺き替えでは、長さ約90センチメートルのヨシを直径20センチメートルほどの束にしたものが7,300束ほど使用されました。元々葺いてあったヨシは80年前のものと思われますが、今回、内側に葺いてあった傷みの少ないヨシは再利用されています。
見学では、ヨシ葺き専用の道具を見せてもらったり、屋根の高さの足場に登り間近で見学したりして、ヨシ葺きのみっしりとした触り心地も味わえ、貴重な機会となりました。
工事中の本堂外観の様子です。
真新しいヨシ。横方向の竹は職人さんの足場です。
葭留の真田陽子さんに説明いただきました。
軒は民家よりも40センチメートルは分厚く、大迫力です。
径20センチメートルほどの束にして葺かれます。
ヨシを叩きこむ道具や刈り込む道具です。
瓦屋禅寺では毎年秋の1カ月間に、約600キログラムの檜皮が採取されています。秋の採取は、檜の水揚げが盛んな夏を避ける意味があるそうです。檜皮は、木によって異なりますが、10年程度のサイクルで採取でき、檜皮を採取した木と採取していない木とでは生育状態は変わらないとのことで、持続可能な資源といえます。また、檜皮を採取するために山を手入れすることで、山を健全に管理することにもつながります。
10年から20年以上の経歴を持つ原皮師さんが、檜皮を剥いでいく様子は見ていて感心するばかりです。檜の立木に、足場となる棒を結びつけた縄を鮮やかに使いまわして登り下りされます。檜を傷めないように、檜に赤褐色の内樹皮を薄く残しながら、外樹皮を剥ぐという高度な技術がうかがえます。
現地で採取した檜皮は、長さおよそ75センチメートル、幅15センチメートルに整え、直径40センチメートル、重さ30キログラムの束にし、これが一丸(ひとまる)と呼ぶ単位となって流通するそうです。
実際に檜皮で屋根を葺くには、1ミリメートルの厚さに加工し、屋根に少しずつ重ねていきながら竹釘で留めます。檜皮の重なりは一カ所に60枚ほどになり、多くの檜皮が必要で、非常に手間がかかる緻密な仕事であることがわかりました。
檜皮を採取した木は赤く見えます。
田中社寺株式会社の須賀均さんに説明いただきました。
特別に職人さんが集まって檜皮を採取。
手際よく檜皮が採られていきます。
檜皮は長さ3メートル、幅15センチメートルほどです。
檜皮を整える包丁や檜皮を剥ぐ道具です。
11月6日(土) 11時~15時30分
現在、工事現場および檜皮剥ぎは見学できません。
拝観の問い合わせは、瓦屋禅寺へ連絡してください。
場所:〒527-0007 建部瓦屋寺町436
電話番号:0748‐22‐1065