森里川湖をめぐるストーリー 6
[2024年6月11日]
ID:17380
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このコラムは、鈴鹿の森から始まり、森里川湖を通じて人と自然がつながっていることを感じていただくものです。
私たちの祖先は、山や大木、岩石などに神霊が宿ると考え、これらの自然神を祭る行事を続けてきました。東近江市の集落では山の神の行事が多く残されています。
山の神は、集落の田畑を潤す川の上流部や山裾の大木、岩などに祭られ、その行事には、大きく分けて次の2つがあります。山村では、年始の山仕事をする前に山の神へお参りし、山入りの許可を願いました。一方、農村では、太いしめ縄を編み、男女の御神体を枝木で表して祭り、神饌を供えて作物の豊作を祈りました。
黄和田町では、かつては、1月7日に山の神に参詣されていましたし、蛭谷町では現在も、その年の山仕事の無事を祈る山の神の神事が行われています。
今崎町では、しめ縄にかぎ状の枝を引っ掛けて、鎌で縄を切ります。しめ縄による山入りの制限とそれを切る山入りの許可を表していると考えられます。また、中野地区や市辺地区の山の神行事には、行列で「ヤマヤマ」と唱え、枝木の御神体に神饌を供える行事が多くみられます。
生活様式が変わり、自然神に対する信仰は薄れつつありますが、簡略化されながらも連綿と続く山の神行事は、山を守り、美しく保ち、大切にしてきた人々の自然観を今に伝えています。そこに「山を利用する感謝と幸福、自然への恐れと敬い」が見て取れ、山や森を大事にした人々の素朴な自然神信仰を知ることができます。
黄和田町の大木と山の神