■記号は、問=問い合わせ IP=IP電話 特集 地域包括ケアシステムの推進をめざして「いつまでも私らしく暮らすために」   2025年には、全国で3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という時代を迎えます。  今後、高齢化が進むと、医療や介護を必要とする人がますます増加し、現在の体制では十分対応できないと見込まれています。  そこで、身近な地域で安心して医療や介護サービスが受けられる在宅医療の充実と、在宅医療・介護連携による継続的な支援体制の整備が求められています。 ●笑顔で「いつもありがとう」  「そめさん、体の調子はどうですか」とあいとう診療所の横田哲朗医師の問いかけに「先生いつもありがとう。おかげさまでぼちぼち調子いいわ」と朗らかに答える久保そめさん(92歳)。横田医師は、言葉を交わしながら素早く聴診器をあて、血圧や体の具合を確認します。一緒に暮らす惠子さんからそめさんの薬の相談を受け、カルテを確認後、連絡することを約束してその日の診療は終了しました。これは、そめさんの自宅で行われた訪問診療でのひとコマです。  ●いつまでも私らしく  近ごろ、「終活(しゅうかつ:人生の終末を迎えるまでに、延命治療や介護、相続などについて自分がどうしたいか考え事前準備すること)」への関心が高まっています。その背景には、自分らしく最期まで過ごしたいという思いがあるのではないでしょうか。  本市の介護保険や高齢者福祉の施策の指針となる「第6期 高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成27年〜29年度)」策定のために、昨年度、63歳以上の市民5000人を対象にアンケートを実施しました(回答率68%)。その中で、自分の人生の最期をどこで迎えたいですかという問いに、50・5%の人が自宅で迎えたいと回答されました。一方で、自宅で最期まで療養することができますかとの問いには、47・8%の人が難しいと回答されています。理由として、「介護してくれる家族に負担がかかる」の割合が最も高く、次に「症状が急に悪くなったときの対応に自分も家族も不安」、「経済的に負担が大きい」となっています。最期まで自宅で過ごしたいという思いを持っていても、現状は難しいと考えている人が多いようです。 ●地域がつながり支えあう  このような中、患者の視点に立った切れ目のない医療・介護の提供体制を築いていくことが求められています。  在宅での療養生活を支えるには、医師や介護者だけでは成り立ちません。訪問看護師やヘルパーなどさまざまな専門職や地域のみなさんとも連携することで、初めて円滑に進めることができます。  本市では、在宅での療養生活を支える医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師など)を対象に「訪問診療研修」を実施しているほか、市民のみなさんを対象に「在宅医療講座」を開催しました(下記参照)。また、病院の入退院と在宅療養生活がスムーズに移行できるような仕組みづくりを考えるワーキング会議や在宅医療を支える人たちの顔が見える関係づくりにも取り組んでいます。 ◇『在宅療養生活を支える体制整備』 医療関係者を対象に、在宅での療養生活の理解を深める第一歩として、同職種や専門以外の職種の訪問診療に同行し研修する「訪問診療研修」を実施しています。 写真=薬剤師の訪問研修 ◇『在宅医療講座の実施』  在宅医療のためのヒントを見つけてもらおうと、医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力を得て、市民のみなさんを対象にした3回講座「おうちがいつでも診察室」を開催しました。 写真=医師を講師にした在宅医療講座 ◇「年齢を重ねても東近江市が一番安心して住めると言われたいですね」東近江医師会 会長 小田原 健一 医師(小田原医院) ◆不安なことは何でも相談を  患者さんから診察時に「歳を取って病院に来ることができなくなったらどうしよう」と相談されたとき、私は「訪問診療するから心配ないよ」と言っています。先日、在宅で療養中のご夫婦をそれぞれ看取(みと)りました。日ごろから自分の家で最期を迎えたいと聞いており、定期的に訪問していました。お二人ともだんだん食べなくなって眠るようにおだやかに旅立たれました。かかりつけ医であれば、診療の経過がわかった上で症状を診ることができますので、普段から「かかりつけ医」をもっておられるといいですね。そして、我慢しないで何でも相談してください。話していただくことで解決への糸口がつかめるようになりますから。 ◆三方よし研究会で多職種の連携体制を強化  東近江市を含めた周辺2市2町には、患者さんへ切れ目のないサービスを提供するため、医療関係者や介護関係者などが一堂に集まる「三方よし研究会」があります。月1回の勉強会などを通じ、さまざまな役割を担う人たちの顔の見える関係作りに取り組んでいます。参加者は熱心で、患者さんによりよい支援を提供したいと意欲を持って活動しています。この会があることでいろんな職種の人と相談がしやすくなり、スムーズに連携できるようになりました。  今後は、もっと密に情報を共有し、住み慣れた地域でいつまでも安心して暮らせるよう、支援体制を整えていきたいと考えています。 ●まずは相談してください  在宅での介護や療養生活での悩みや疑問をどこに相談したらいいのかということをよくお聞きします。このような場合は、福祉総合支援課(地域包括支援センター)にお気軽にご相談ください。   自分らしい最期を考え周囲に伝えることは、いつまでも自分らしく暮らせることにつながります。一人ひとりその時々で事情が異なり、すぐに結論が出るものではありませんが、この機会に、あなたの身近な人や大切な人と話し合ってみませんか。 問=福祉総合支援課 電話=0748−24−5641 IP=0505−801−5641