■記号は、時=日時 問=問い合わせ IP=IP電話 FAX=ファックス 特集 認知症 気づき、つなぎ、暮らしを守る  認知症は誰にでも起こりうる脳の病気です。近い将来、高齢者の5人に1人が認知症になると予想されています。  認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らしていくために、今私たちに必要なことを考えましょう。 問=福祉総合支援課(地域包括支援センター)  電話=0748-24-5641 IP電話=050-5801-5641 FAX=0748-24-5693 ●物忘れは認知症の始まり?  認知症は、記憶力や判断力が低下して、社会生活や日常生活に支障が出る脳の病気です。加齢による脳の衰えとは異なります。  例えば、お昼に食べたものを思い出せないといった、体験の一部を忘れることは、加齢による物忘れです。しかしながら、昼ごはんを食べたことを忘れてしまう場合は認知症が疑われます。【図1】 【図1】 物忘れと認知症の違い。物忘れは体験したことの一部を忘れるが、認知症は体験したことを忘れてしまう。 ●認知症に気づく  認知症の初期症状として、「何回も同じことを言う。」「今の時間や月日が分からない。」といった相談がよくあります。しかしながら、本人や周囲が「おやっ?」と思っていても、初期症状を見逃すことがあります。本人が言い訳などをして、うまくその場の話の辻褄を合わせる「取り繕い現象」で気づくのが遅れてしまうことがあるからです。  家族や周囲の人が「どうもいつもと様子が違う。」と感じたら、かかりつけ医や地域包括支援センターなどに相談してください。認知症は早期発見、早期治療がとても大切です。 ●認知症の種類  認知症の約50%を占めるアルツハイマー病は、脳細胞の変性が原因で起こります。脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が原因で脳に栄養や酸素が行かなくなり、その部分の細胞が死んだり働きが悪くなったりします。レビー小体型認知症は、パーキンソン症状や幻視をともない、症状の変動が大きいのが特徴です。前頭側頭型認知症では、我慢や思いやりなどの社会性を失い、「我が道を行く」行動を取る特徴があります。そのほか、薬の副作用やビタミン不足などによっても認知症の症状が現れることがあります。  なお、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などによる認知症状に対しては、治療ができる場合もあります。 ●早期からの支援で進行を緩やかに  認知症は、放っておくと進行していきます【図2】。早く見つけて適切に対応することで、症状が軽い状態を維持することができます。初期段階で専門医に診断してもらい、必要に応じて治療を開始することが大切です。加えて、認知症の人や家族が孤独や不安を感じない環境を整えることが大切です。 【図2】 アルツハイマー型認知症の進行のグラフ。早期治療をした場合は、何も治療をしない場合に比べて、症状が軽い状態を維持できる。 ●認知症の人への関わり方 地域密着型特別養護老人ホームきいと 認知症専門指導者 金子 理榮子さん  認知症は、何らかの脳の病気によって、これまでに身に付けてきた知識などが徐々に低下し、日常生活や社会生活がうまくできなくなってくる病気です。脳の一部が病気になったことで現れる「中核症状」は、今したことも覚えることができない記憶障害だけでなく、時間や場所、人が分からない、段取りや手順がうまくできない、うまく道具が使えない、2つ以上のことが重なるとうまく物事が処理できないなどの症状があります。   もう一つの症状は、「行動・心理症状」で、妄想や幻覚、不安や焦燥、暴言、暴力などをともないます。これは、認知症の人の性格や素質、精神状態が、周りの環境や中核症状に影響されて起こるものです。  認知症の人が安心して穏やかな気持ちで過ごせるような接し方や環境整備が大切です。 ※行動・心理症状に対しては、薬物療法も有効な手段の一つです。 ・穏やかに過ごせるように、次のような接し方を心がけてください。 1表情は柔らかく、相手に目線を合わせて、穏やかに優しい口調で話しましょう。 2急がせず、動作もゆったり、たくさんの言葉をかけずに、短い会話を繰り返します。 3間違ったことをしたり、失敗しても、注意したり、否定したり、叱責は決してしないでください。できれば優しく「大丈夫ですよ。」と言ってください。自尊心を傷つけないことが肝心です。 4孤独にならないように、孤独だと感じさせないように接してください。「いつも見守られている。気にかけられている。」と感じてもらえるような関係が大切です。 5「ご飯を食べていない。」と言われたら、「もう食べましたよ。」とは言わないで、ちょっとした食べ物を提供してみてください。探し物をして、なくなったと困り果てているときは一緒に探してください。たとえあなたが見つけても、本人が見つけられるように置いてください。 写真=金子 理榮子さん ●医療と介護のプロがタッグ! 認知症初期集中支援チーム 患者や家族を支える心強い専門チームです  「認知症初期集中支援チーム」は、医療や介護の専門家と市職員によるチームです。  認知症の人が病院に行きたがらなかったり、独居であったりすると、医師の診断を受ける機会がなく、医療や介護支援サービスを受けることができない場合があります。また、認知症と気づかず、早期治療の機会を逃してしまうケースもあります。  当チームでは、家族や周囲の人からの情報提供を受けて、家庭を訪問して本人の状態や家庭の介護負担を伺います。そして、各ケースに合わせ専門家と適切な対処法を共有し、医療や介護支援につなげます。 写真=東近江市認知症初期集中支援チームのメンバーの集合写真と、会議の様子 ・最期まで自宅で安心して過ごせるように 医療法人恒仁会近江温泉病院理事長・院長 認知症疾患医療センター長 小山威夫さん  昨年10月、宮崎市内で73歳男性が軽自動車で歩道を暴走し、6人が死傷するという重大な事故がありました。また、徘徊による行方不明者や介護殺人など、認知症に起因する社会問題が近年増加しています。  厚生労働省の調査では、2012年の認知症患者数は462万人で、2025年には700万人を超えることが予想されており、認知症患者を治療・介護する病院や施設の不足が浮き彫りになってきました。  そんな中で、近江温泉病院認知症疾患医療センターは、東近江医療圏における認知症対策推進の中核医療機関として、認知症の早期診断・治療に取り組んでいます。また、東近江市認知症初期集中支援チームに医師、作業療法士、精神保健福祉士を派遣しており、認知症の早期発見や医療・介護サービスへの橋渡しのための助言を行っています。  たとえ認知症を患ったとしても、家族や地域の皆さんに支えられ、最期まで自宅で安心して過ごすことができるような社会づくりをめざして、これからも精一杯努力します。 ●認知症に関する相談・お問合せは、福祉総合支援課や各支所の地域包括支援センターまでお気軽にご連絡ください。 問=福祉総合支援課(地域包括支援センター)  電話=0748-24-5641 IP電話=050-5801-5641 FAX=0748-24-5693 ●東近江市では、左図のとおり、地域で認知症の人を支える様々な活動が行われています。今回、その中から、認知症カフェの取組みを紹介します。 左図=地域での取組み一覧。    ・徘徊高齢者声かけ見守り訓練    ・認知症サポーター    ・認知症キャラバンメイト    ・認知症カフェ(市内5か所)    ・市民講座(認知症連続講座)    ・出前講座    ・福祉授業(小学校・中学校) ●出会いと情報交換の場 認知症カフェ  認知症カフェは、認知症の人やその家族、地域の皆さんが参加して、お茶をしながら交流を深める場です。日々の生活の中で感じている悩みを共有することで心のストレスを軽減したり、気軽に話し、楽しむ仲間をつくることができます。また、ケアマネジャーなどの専門家もいますので、症状の変化や家族の負担感に気づくこともできます。  NPO法人しみんふくしの家八日市が主催する認知症カフェは、地元の人に認知症の人との関わり方や、認知症予防などの啓発を行うことを中心に開催されています。認知症カフェは左表のとおり市内で5か所実施されています。参加することで、新たな出会いや発見があるかもしれません。 市内の認知症カフェ一覧 ・認知症カフェ(栄町) 問=NPO法人しみんふくしの家八日市 電話=0748-22-7006 ・かじやの里カフェ(佐生町) 問=NPOかじやの里 電話=050-5802-9893 ・ちゃがゆの郷カフェ(乙女浜町) 問=東近江市社会福祉協議会 電話=0748-45-8033 IP電話=050-5802-6107 ・菊水すこやかCafe(神郷町) 問=菊水神郷デイサービス 電話=0748-43-0728 ・オレンジ・サンシャインカフェ(沖野五丁目) 問=リースナブル・リハせきすい 電話=0748-23-1199 ●おしゃべりを楽しみ、認知症を知る  当法人の「認知症カフェ」は、中野地区サロンの皆さんを中心に地域の人も加わり、昨年の11月にスタートしました。  当カフェでは、認知症についての理解を少しずつ深めながら、認知症であっても、可能性をいっぱい秘めているということを、運営している小規模多機能型居宅介護事業所の利用者のアート作品などを通じて伝えています。  認知症だからできないこともありますが、支援について知るとともに、「認知症の人」でなく、「○○さん」であることを何よりも大切にしたいと思っています。こうしたお話の中から、参加の皆さんがご自身の認知症予防にもますます関心を持たれていると感じています。もちろん、たくさんのおしゃべりを楽しみながら。 NPO法人 しみんふくしの家八日市 亀田久美子さん