○東近江市風景づくり条例
平成22年7月1日
条例第26号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 風景づくり基本計画(第6条)
第3章 風景づくりの推進(第7条―第14条)
第4章 景観計画(第15条―第17条)
第5章 行為の規制等(第18条―第24条)
第6章 景観重要建造物及び景観重要樹木(第25条―第27条)
第7章 東近江市景観審議会(第28条・第29条)
第8章 雑則(第30条)
附則
わたしたちのまち東近江市は、緑深い鈴鹿の山並からさざなみ寄せる琵琶湖まで、愛知川、日野川の清流とその流域に拓けた広大な田園や里山など、水と緑の豊かな自然環境と田園風景に恵まれている。
また、いにしえより万葉ロマンの地、渡来文化の地として知られ、市場町、門前町や交通の要衝として栄え、百済寺、永源寺をはじめ数多くの歴史文化遺産が分布するなど、重層的な歴史と文化に培われた風景が今日も輝きを放っている。
そして、田園地帯に点在する農村集落や、市場町や歴史街道沿いの家並、近江商人の屋敷群など、そこには人々が営々と築いてきた暮らしの風景がある。
みずみずしい自然、光を放つ歴史、風合いのある生活文化が一体となって調和した風景は、郷土に対する愛着と誇りを生み、心の豊かさを育み、健やかな暮らしをもたらすものである。
先人達によって守り育てられてきたこの風景は、かけがえのない市民共有の財産であることを、わたしたちは深く心にとどめなければならない。そのため、市民と事業者と市の協働によって、この「水と光と風」の恵みにあふれた風景を未来に引き継ぐとともに、さらに魅力ある東近江市の風景づくりを推進することを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、東近江市における風景づくりを総合的かつ計画的に推進するための基本的な事項及び景観法(平成16年法律第110号。以下「法」という。)の施行に関し必要な事項を定めることにより、東近江市の風景を未来に継承し、心豊かなまちづくりの実現に資することを目的とする。
(1) 風景づくり 東近江市の自然、歴史、文化等に培われた良好な風景を守り育てるとともに、新たな魅力ある風景を創造することをいう。
(2) 市民 市内に居住する者、市内に通勤し、又は通学する者及び市内の土地、建物等を所有し、占有し、又は管理する者をいう。
(3) 事業者 市内において事業活動を行い、又は市内に土地、建物等を所有し、占有し、又は管理するすべての法人その他の団体をいう。
(4) 工作物 建築物以外の工作物で規則で定めるものをいう。
(市の責務)
第3条 市は、風景づくりを推進するため、総合的な施策を策定し、これの実施に努めなければならない。
2 市は、風景づくりに関する施策の策定及び実施に当たっては、市民及び事業者の意見が十分に反映されるよう努めなければならない。
3 市は、道路、公園その他の公共施設の整備及び管理に当たっては、風景づくりの先導的役割を果たすよう努めなければならない。
4 市は、市民及び事業者の風景づくりに関する知識の普及及び意識の向上に努めるとともに、風景づくりに関する情報の提供その他支援に努めなければならない。
(市民の責務)
第4条 市民は、自らが風景づくりの主体であることを認識し、自主的かつ積極的に風景づくりに努めなければならない。
2 市民は、市が実施する風景づくりに関する施策に協力しなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、自らの施設及び事業活動が風景づくりに影響を与えるものであることを認識し、自主的かつ積極的に風景づくりに努めなければならない。
2 事業者は、市が実施する風景づくりに関する施策に協力しなければならない。
第2章 風景づくり基本計画
(風景づくり基本計画)
第6条 市長は、風景づくりを総合的かつ計画的に進めるため、風景づくりの基本的な考え方を明らかにした東近江市風景づくり基本計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。
2 市長は、基本計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ市民等の意見を聴取し、反映させるよう努めなければならない。
3 市長は、基本計画を変更しようとするときは、あらかじめ第28条に規定する東近江市景観審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、基本計画を策定し、又は変更したときは、速やかに公表しなければならない。
第3章 風景づくりの推進
(総合的な風景づくりの推進)
第7条 市長は、風景づくりを総合的かつ効果的に推進するため、風景づくりに関連する法に基づく諸制度を積極的に活用するとともに、市が実施する施策等と調整及び連携を図るものとする。
(風景づくり市民団体の認定等)
第8条 市長は、一定の地域の風景づくりを目的として活動する市民団体で、規則で定める要件を満たすものを、風景づくり市民団体として認定することができる。
2 前項の規定により認定を受けた団体は、法第11条第2項の規定による条例で定める団体とする。
3 第1項の規定による認定を受けようとする団体は、規則に定めるところにより、市長に申請しなければならない。
4 市長は、風景づくり市民団体が認定の要件に該当しなくなったと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。
(風景づくり協定の認可等)
第9条 法第81条第4項又は法第90条第1項の規定による景観協定(以下「風景づくり協定」という。)の認可を受けようとする者は、規則で定めるところにより、市長に申請しなければならない。
2 前項の規定は、法第84条第1項及び第88条第1項の認可について準用する。
(重要視点場の指定)
第10条 市長は、特に優れた東近江市固有の景観を眺望できる視点場を、重要視点場として指定することができる。
2 市長は、重要視点場を指定しようとするときは、あらかじめその所有者、占有者又は管理者の同意を得なければならない。
3 市長は、重要視点場を指定しようとするときは、あらかじめ東近江市景観審議会の意見を聴かなければならない。
(重要視点場の整備等)
第11条 市長は、重要視点場を指定したときは、当該視点場の整備及び保全に努めなければならない。
2 市長は、重要視点場からの眺望景観を保全するために、必要な措置を講じるよう努めなければならない。
(緑化の推進)
第12条 市、市民及び事業者は、山林、樹木及び緑地が東近江市の風景づくりに果たす重要性を認識し、東近江市自然環境及び生物多様性の保全に関する条例(平成19年東近江市条例第29号)及び東近江市にぎわい里山づくり条例(平成18年東近江市条例第34号)の規定によるほか、緑地の保全及び緑化の推進に必要な措置を講じるよう努めなければならない。
(表彰)
第13条 市長は、風景づくりに著しく寄与していると認められる建築物その他のものについて、その所有者、設計者、施工者等を表彰することができる。
2 市長は、風景づくりに著しく寄与したと認められる個人又は団体を表彰することができる。
(支援)
第14条 市長は、法第19条第1項の規定による景観重要建造物又は法第28条第1項の規定による景観重要樹木の所有者に対し、その保全等のために技術的援助その他必要な支援を行うことができる。
2 市長は、前項に定めるもののほか、風景づくりに寄与すると認められる行為をしようとする者に対し、技術的援助その他必要な支援を行うことができる。
第4章 景観計画
(景観計画の策定)
第15条 市長は、基本計画を推進するため、法第8条第1項に規定する景観計画(以下「景観計画」という。)を定めるものとする。
2 市長は、景観計画を定め、又は変更しようとするときは、法第9条に規定するもののほか、あらかじめ、東近江市景観審議会の意見を聴かなければならない。
(景観形成重点地域及び景観形成重点地区)
第16条 市長は、景観計画区域(法第8条第2項第1号に規定する景観計画区域をいう。以下同じ。)内において良好な景観の形成を図るため、特に必要と認める広域的かつ連続的な区域を景観形成重点地域(以下「重点地域」という。)として指定し、景観計画に定めることができる。
2 市長は、景観計画区域内において良好な景観の形成を図るため、特に必要と認める一団の区域を景観形成重点地区(以下「重点地区」という。)として指定し、景観計画に定めることができる。
3 市長は、重点地域又は重点地区を指定するときは、当該地域、地区ごとにその特性に応じ、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 良好な景観の形成に関する方針
(2) 良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項
(3) その他良好な景観の形成に必要な事項
(景観計画への適合)
第17条 法第16条第1項各号に規定する行為をしようとする者は、景観計画に適合するよう努めなければならない。
2 市長は、法第16条第1項各号に規定する行為をしようとするときは、景観計画に適合させなければならない。
第5章 行為の規制等
(届出を要する行為)
第18条 法第16条第1項第4号の条例で定める行為は、重点地域内又は重点地区内における次の各号に掲げる行為とする。
(1) 土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更(以下「土地の開墾等」という。)
(2) 木竹の伐採
(3) 屋外における土石、廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第2条第1項に規定する廃棄物をいう。)、再生資源(資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)第2条第4項に規定する再生資源をいう。)その他の物件の堆積(以下「物件の堆積」という。)
(4) 水面の埋立て又は干拓(以下「水面の埋立て等」という。)
(届出の方法)
第19条 法第16条第1項の条例で定める届出の方法は、同項に規定する事項を記載した届出書に、規則で定める図書を添付して提出するものとする。
2 法第16条第1項の条例で定める事項は、行為をしようとする者の氏名及び住所(法人その他の団体にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)並びに行為の完了予定日とする。
(届出を要しない行為)
第20条 法第16条第7項第11号の条例で定める行為は、次の各号のいずれかに該当する行為とする。
(1) 滋賀県風致地区内における建築等の規制に関する条例(昭和45年滋賀県条例第24号)第2条第1項の規定による許可を受け、又は同条第3項の規定による協議若しくは同条例第3条の規定による通知をして行う行為
(2) 東近江市風致地区内における建築等の規制に関する条例(平成24年東近江市条例第49号)第2条第1項の規定による許可を受け、又は同条第3項の規定による協議若しくは同条例第3条の規定による通知をして行う行為
(3) 東近江市伝統的建造物群保存地区保存条例(平成17年東近江市条例第127号)第4条第1項の規定による許可を受け、又は同条例第6条の規定による協議若しくは同条例第7条の規定による通知をして行う行為
(4) 自然公園法(昭和32年法律第161号)第20条第3項又は第21条第3項の規定による許可を受けて行う行為
(5) 滋賀県立自然公園条例(昭和40年滋賀県条例第30号)第16条第3項の規定による許可を受けて行う行為
(6) 森林法(昭和26年法律第249号)第10条の2第1項、第34条第1項若しくは第2項又は第49条第1項の規定による許可を受けて行う行為
(7) 砂利採取法(昭和43年法律第74号)第16条の規定による認可を受け、河川法(昭和39年法律第167号)第25条の規定による許可を受けて行う行為
(8) 重点地域又は重点地区における行為で別表第1に定める行為
(9) 景観計画区域内(重点地域及び重点地区を除く。)における行為で都市計画の区分に応じ、別表第2に定める行為
(10) その他市長が景観形成上支障のないものとして特に認める行為
(助言及び指導)
第21条 市長は、法第16条第1項又は第2項の規定による届出があった場合において、当該届出に係る行為が景観計画に適合しないと認めたときは、届出をした者に対し、必要な措置を講じるよう助言し、又は指導することができる。
(特定届出対象行為)
第22条 法第17条第1項の条例で定める行為は、法第16条第1項第1号又は第2号に掲げる行為のうち、届出を要する行為とする。
(勧告、命令の手続)
第23条 市長は、法第16条第3項の規定による勧告又は法第17条第1項若しくは第5項の規定による命令をしようとするときは、東近江市景観審議会の意見を聴かなければならない。
(公表)
第24条 市長は、法第16条第3項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
第6章 景観重要建造物及び景観重要樹木
(景観重要建造物の指定及び解除)
第25条 市長は、景観重要建造物を指定しようとするときは、東近江市景観審議会の意見を聴かなければならない。
2 市長は、景観重要建造物を指定したときは、その旨を告示しなければならない。
3 前2項の規定は、景観重要建造物の指定の解除について準用する。
(景観重要樹木の指定及び解除)
第26条 市長は、景観重要樹木を指定しようとするときは、東近江市景観審議会の意見を聴かなければならない。
2 市長は、景観重要樹木を指定したときは、その旨を告示しなければならない。
3 前2項の規定は、景観重要樹木の指定の解除について準用する。
(管理の方法の基準)
第27条 法第25条第2項の規定による景観重要建造物の管理の方法の基準は、規則で定める。
2 法第33条第2項の規定による景観重要樹木の管理の方法の基準は、規則で定める。
第7章 東近江市景観審議会
(設置)
第28条 この条例の規定によりその権限に属するものとされた事項を調査審議するほか、市長の諮問に応じ、風景づくりに関する事項について調査審議するため、東近江市景観審議会(以下「景観審議会」という。)を置く。
2 景観審議会は、前項の調査審議を行うほか、風景づくりについて意見を述べることができる。
(組織)
第29条 景観審議会は、委員11人以内をもって組織する。
2 委員は、風景づくりに関し学識経験を有する者その他市長が適当と認める者のうちから市長が任命し、又は委嘱する。
3 委員の任期は、4年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、再任されることができる。
第8章 雑則
(委任)
第30条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
(経過措置)
2 平成22年9月30日までにふるさと滋賀の風景を守り育てる条例(昭和59年滋賀県条例第24号。以下「県条例」という。)第11条の規定による届出をした行為については、この条例の規定は適用しない。
3 第18条に規定する法第16条第1項第4号の条例で定める行為は、平成22年10月1日から規則で定める日(公布の日から起算して1年を超えない範囲内において規則で定める日をいう。以下同じ。)までの間においては、同条の規定にかかわらず、県条例第11条第3項に規定する行為とする。
(附則第3項、第4項及び第5項に規定する規則で定める日は、平成23年規則第3号で平成23年3月31日)
4 第20条に規定する法第16条第7項第11号の条例で定める行為は、平成22年10月1日から規則で定める日までの間においては、同条の規定にかかわらず、県条例第13条に規定する行為とする。
附則(平成25年条例第21号)
この条例は、平成25年4月1日から施行する。
別表第1(第20条関係)
行為の区分 | 行為の規模等 | ||
1 | 建築物の新築、増築、改築又は移転 | 行為に係る部分の床面積の合計が10平方メートル以下で、かつ、行為後の高さが5メートル以下のもの | |
2 | 建築物の外観を変更することとなる修繕、模様替え又は色彩の変更 | 外観の変更に係る部分の面積の合計が10平方メートル以下のもの | |
3 | 工作物の新設、増築、改築又は移転 | 垣(生垣を除く。)、さく、塀、擁壁その他これに類する工作物 | 行為後の高さが1.5メートル以下で、かつ、行為後の長さが10メートル以下のもの |
電気供給のための電線路、有線電気通信のための線路又は空中線系(その支持物を含む。) | 行為後の高さが10メートル以下のもの | ||
上記以外の工作物 | 行為後の高さが5メートル以下のもの | ||
4 | 工作物の外観を変更することとなる修繕、模様替え又は色彩の変更 | 外観の変更に係る部分の面積の合計が10平方メートル以下のもの | |
5 | 法第16条第1項第3号に規定する開発行為、土地の開墾等又は水面の埋立て等 | 切土又は盛土により生じるのり面の高さが1.5メートル以下で、かつ、長さが10メートル以内のもの又は行為に係る部分の面積が100平方メートル以下のもの | |
6 | 木竹の伐採 | 木竹の高さが5メートル以下のもの | |
7 | 物件の堆積 | 行為後の高さが1.5メートル以下で、かつ、行為に係る部分の面積が100平方メートル以下のもの又は外部から見通すことができない場所での行為又は期間が30日以内の行為 |
別表第2(第20条関係)
行為の区分 | 行為の規模等 | |||
市街化区域 | 市街化区域以外の景観計画区域 | |||
1 | 建築物の新築、増築、改築又は移転 | 行為に係る部分の床面積の合計が1,000平方メートル以下で、かつ、行為後の高さが13メートル以下のもの | 行為に係る部分の床面積の合計が500平方メートル以下で、かつ、行為後の高さが10メートル以下のもの | |
2 | 建築物の外観を変更することとなる修繕、模様替え又は色彩の変更 | 建築物の床面積の合計が1,000平方メートル以下で、かつ、高さが13メートル以下のもの又は外観の変更に係る部分の面積が建築物の一壁面毎に2分の1以下のもの | 建築物の床面積の合計が500平方メートル以下で、かつ、高さが10メートル以下のもの又は外観の変更に係る部分の面積が建築物の一壁面毎に2分の1以下のもの | |
3 | 工作物の新設、増築、改築又は移転 | 電気供給のための電線路、有線電気通信のための線路又は空中線系(その支持物を含む。) | 行為後の高さが15メートル以下のもの | |
上記以外の工作物 | 行為後の高さが13メートル以下のもの | |||
4 | 工作物の外観を変更することとなる修繕、模様替え又は色彩の変更 | 外観の変更に係る部分の面積が工作物の外観の2分の1以下のもの | ||
5 | 法第16条第1項第3号に規定する開発行為 | 開発面積が1,000平方メートル以下のもの |